
滋賀県学校心臓検診の心電図の判定基準(平成16年度改訂版)
1991年児童生徒の心疾患管理の手引き以来、心電図判定および処理基準は、10年の歳月が経ち、また1996年日本小児循環器学会より、学校心臓検診二次検診抽出者ガイドライン(一次検診の心電図所見から)が発表され、また、色々な心電図判定基準処理基準も変化してきました。
今回それらを考え合わせ、新しい学校心電図判定及び処理基準を決定しました。
- 学校心臓検診二次検診抽出者ガイドラインを中心に変更した。
- QT延長における、シュワルツの処理基準(1993)やBRUGADA様心電図など新しい基準もくみいれた。
- 小、中学校と高校をひとつの処理基準にした。
- A判定、B判定にわけた。
A判定:二次以降の検診に抽出すべき所見
B判定:所見として判定には必要だが二次検診へは必ずしも抽出しなくてもよい所見
(但し、他に所見がある場合(軽度の徐脈など)は心電図判定読者の裁量でA判定に変更可能である。)
この滋賀県判定基準は全県的な心電図判定基準としてBRUGADA様心電図の判定基準をいれた日本初の判定基準である。
- 頻脈
A判定:心拍数 150以上/分(小学校)
140以上/分(中高生)
徐脈
A判定:心拍数 40以下/分(中学生以上)
45以下/分(小学生)
- QRS電気軸
A判定
・左軸偏位 : ‐30°から-90
・右軸偏位 : +120°から+180゚
・ 不定軸または極端な軸偏位 : -90°から-180°
・ 以上を不定軸または右軸偏位、左軸偏位として判定
- 心室内伝導
- 完全左脚ブロック
A判定:
・完全左脚ブロック : QRS幅 ≧ 0.12秒かつ VAT ≧ 0.06秒
(T,U,aVL,V5、V6のいずれか)(中学生以上)
・完全左脚ブロック : QRS幅 ≧ 0.10秒かつ VAT ≧ 0.05秒
・(T,U,aVL,V5,V6のいずれか)(小学生)
・間欠性完全左脚ブロック
- 完全右脚ブロック
A判定 完全右脚ブロック : QRS幅 ≧ 0.12秒かつR'>Rで VAT ≧ 0.06秒
(V1またはV2)、またはS>R (TまたはU) (中学生以上)
・完全右脚ブロック : QRS幅 ≧ 0.10秒かつR'>Rで VAT ≧ 0.05秒
(V1またはV2)、またはS>R (TまたはU) (小学生)
・間欠性完全右脚ブロック
- 不完全右脚ブロック
A判定:QRS幅<0.12秒かつR'>R(V1またはV2)でかつR'V1≧|SV1|(中学生以上) A判定:QRS幅<0.10秒かつR'>R(V1またはV2)でかつR'V1≧|SV1|(小学生)
- 心室内伝導障害
A判定 : 心室内伝導障害 QRS幅 ≧ 0.12秒 (中学生以上)QRS幅 ≧ 0.10秒 (小学生)
- 不完全左脚ブロック
A判定 :
・不完全左脚ブロックパターン : 0.12秒 > QRS幅 ≧ 0.10秒かつ
R'-R型でR'≧R (V5またはV6) (中学生以上)
・不完全左脚ブロックパターン : QRS幅 < 0.10秒かつR'-R型でR'≧R (V5またはV6)
(小学生)
- 左脚前枝ブロック
A判定:
・左脚前枝ブロック : QRS幅< 0.12秒 かつQI≧0.025mVで
QI幅<0.03秒と‐45°以上の左軸偏位 (中学生以上)
・左脚前枝ブロック : QRS幅 < 0.10秒 かつQI≧0.025mVで
QI幅<0.03秒と‐30°以上の左軸偏位 (小学生)
- 二枝ブロック
A判定:
・完全右脚ブロックと‐45°以上の左軸偏位 (中学生以上)
・完全右脚ブロックと‐30°以上の左軸偏位 (小学生)
- 房室伝導
- 完全房室ブロック
A判定:
・ 3度(完全)房室ブロック
- 2度房室ブロック
A判定:
・ 2度房室ブロック
- PR(PQ)時間
A判定:
・ PR時間 > 0.24秒(小学生)
PR時間 > 0.28秒(中学生以上)
B判定:
・ PR時間 > 0.22秒 (中学生以上)
・ PR時間 > 0.20秒 (小学生)
以上をPR延長または1度房室ブロックとして判定
- WPW症候群
A判定:
- WPW型 : PR時間 < 0.12秒かつ QRS幅 ≧ 0.12秒かつ
VAT >0.06秒 (T,U,aVL,V4,V5,V6のいずれか)(中学生以上)
- WPW型 : PR時間 < 0.10秒かつ QRS幅 ≧ 0.10秒かつ
VAT >0.05秒(T,U,aVL,V4,V5,V6のいずれか)(小学生のみ)
- WPW型(間欠性)
- PR時間正常でも上記@ABを認めはっきりデルタ波を認めるもの
- 変行伝導
B判定:
・ 変行伝導
- 人工ペースメーカー
A判定:
・ 人工ペースメーカー
- PR短縮
B判定:
PR時間≦0.1秒
- 調律
- 上室期外収縮
A判定:
・ 多形(源)性上室期外収縮・多発性または2連発上室期外収縮
B判定:
・ 単形(源)性上室期外収縮
- 心室期外収縮
A判定: ・ 心室期外収縮
- 心室頻拍
A判定: ・ 心室頻拍
- 固有心室調律
A判定: ・ 固有心室調律
- 心房細動
A判定: ・ 心房細動
- 心房粗動
A判定: ・ 心房粗動
- 心房粗・細動
A判定 : ・ 心房粗・細動
- 上室頻拍
A判定: ・ 上室頻拍
- 洞停止または洞房ブロック
A判定: ・ 洞停止または洞房ブロック
- 接合部調律
B判定: ・ 接合部調律
- 房室解離
A判定: ・ 房室解離
- 補充収縮または補充調律
B判定: ・ 補充収縮または補充調律
- 鑑別不能な不整脈
A判定: ・ 鑑別不能な不整脈
- Q波
- 幅広いQ波
A判定:
・|Q|/R ≧ 1/3でかつQ ≧ 0.03秒 (T,U,aVL,V2〜V6のいずれか)
・Q ≧ 0.04秒 (T,U,V1〜V6のいずれか)
・ QV ≧ 0.05秒でかつ |QaVF| ≧ 0.1mV
・ QaVF ≧ 0.05秒
B判定
・QaVL ≧ 0.04秒でかつ RaVL ≧ 0.3mV
・0.04秒 > Q ≧ 0.03秒(T,U,V2〜V6のいずれか)
・0.05秒 > QV ≧ 0.04秒 でかつ |QaVF| ≧ 0.1mV
0.05秒 > QaVF ≧ 0.04秒
- QSパターン
A判定
胸壁上右隣りの誘導に初期Rがある時のQSパターン
(V2〜V6のいずれか)
・QSパターン(TまたはU)
・QSパターン (V1〜V3のすべて)
・QSパターン (VおよびaVlL,aVF)
- 深いQ波
A判定
・|QV5| < |QV6| でかつ |QV6| ≧ 0.5mV
B判定
・ |Q| ≧ 0.5mV(VおよびaVF)
- その他のQ波所見
A判定
・qR(S)パターン(V1)
以上を異常Q波(abnormal Q)として判定
- R・S波
- 右室肥大
A判定
・右側胸部誘導パターン : V1で,qRS、qR,またはR型
A判定
- 右側胸部誘導の高いR
- RV1 ≧ 2.0mV (小学生および中学生以上の男子)
RV1 ≧ 1.5mV (中学生以上の女子)
- V1がR<R'でかつR'V1 ≧ 1.0mV
- V1がR>|S|でRV1 ≧ 1.5mV (小学生および中学生以上の男子)
RV1 ≧ 1.0mV (中学生以上の女子)
- 左側胸部誘導の深いS
- @ |SV6| ≧ 1.0mV
- A V6がR ≦ |S| でかつ |SV6| ≧ 0.5mV
- 右側胸部誘導のVAT延長 : V1 ≧ 0.035秒
- 右軸偏位 : QRS電気軸 ≧ 120°
点数 (1) : 3点 (2)(3) : 2点 (4) : 1点
判定 5点以上で右室肥大、A判定とする。
注
- WPW症候群や右脚ブロックがあれば、右室肥大の判定は困難である。
- 各項の亜項は重複しても加算しない。
- 左室肥大
A判定
・左側胸部誘導のST-Tの肥大性変化
A判定
- 左側胸部誘導の高いR
- RV6 ≧ 3.0mV (小学生および中学生以上の男子)
RV6 ≧ 2.5mV (中学生以上の女子)
- RV5 ≧ 4.0mV (小学生および中学生以上の男子)
RV5 ≧ 3.5mV (中学生以上の女子)
- 右側胸部誘導の深いS
- RV6 + |SV1| ≧ 5.0mV (小学生および中学生以上の男子)
RV6 + |SV1| ≧ 4.0mV (中学生以上の女子)
- RV5 + |SV1| ≧ 6.5mV (小学生および中学生以上の男子)
RV5 + |SV1| ≧ 5.0mV (中学生以上の女子)
- U,V,aVF誘導の高いR
- RUおよびRV ≧ 2.5mV
- RaVF ≧ 2.5mV
- 左側胸部誘導の深いQ
|QV5| < |QV6| でかつ |QV6| ≧ 0.5mV
- 左側胸部誘導のVAT延長 : V5 または V6 ≧ 0.05秒 (小学生)
V5 または V6 ≧ 0.06秒 (中学生以上)
- 左軸偏位 : QRS電気軸≦ 0°(小学生)
≦-30°(中学生以上)
点数 (A)(B)(D) : 3点 (C)(E) : 2点 (F) : 1点
判定 5点以上で左室肥大、A判定とする。
注
- ST-Tの肥大性変化V5またはV6で、高いR波を認め、T波が陰性または2相性(−〜+型)のもの。ST区間は下り坂ないし水平のことが多い。
- WPW症候群や左脚ブロックがあれば。左室肥大の判定は困難である。
- 各項の亜項は重複しても加算しない。
以上を右室肥大または左室肥大として判定
- ST接合部およびST区間
A判定
- ST-J降下 ≧ 0.05mVでST区間が水平または下り坂
(T,U,aVL,aVF,V1〜V6のいずれか)
B判定
- ・ST-J降下<0.05mVでありST区間が下り坂でST区間またはT波の最低部が基線より0.05mV以下低下(T,U,aVL,V2〜V6のいずれか)
- ・ST-J降下>0.2mVでありST区間が上り坂またはU型(T,U,aVL,V2〜V6のいずれか)
以上をST低下として判定
- T波
A判定
- T陰性または二相性で、陰性部 ≧ 0.5mV(T,U,aVL[R≧0.5mV],aVF[QRSが主に上向き],V3〜V6のいずれか)(但し、小学生の胸部誘導は、V4〜V6のいずれか)
- T陰性または二相性で、0.5mV >陰性部≧0.1mV (T,U,aVL[R≧0.5mV],aVF[QRSが主に上向き],V4〜V6のいずれか)(但し、aVFのみではB群)ただし上記のいずれも心拍毎の変化で正常化するのはB判定とする。
B判定
・T平定(0)またはT陰性か二相性(‐+型)で陰性部<0.1mV (ST区間が水平または下り坂)(T,U,aVL[R≧0.5mV],V5,V6のいずれか)
以上をT波異常として判定
- その他
- 低電位差
B判定
・ 低電位差 : QRS < 0.5mV (T,U,Vのすべて)または
QRS < 1.0mV (V1からV6のすべて)
- 心房負荷
B判定 ・ P ≧ 0.30mV (U,V,aVF,V1のいずれか)
・ P幅 ≧ 0.12秒 (T,U,aVLのいずれか) (中学生以上)
・ P幅 ≧ 0.10秒 (T,U,aVLのいずれか) (小学生)
- 右胸心
A判定 :右胸心
- QT延長
A判定
・ QTc ≧ 0.45 (注1)
- とりなおし
A判定
・ 技術的欠陥のために解析不能なもの
- U波
A判定 U波の高さが0.2mV以上
B判定 陰性U波
- Brugada型心電図
A判定
右側胸部誘導V1,V2,V3,のいずれかで、右脚ブロックパターン(late r`の小さい場合を含む)、かつJ点から40msで0.2mV以上のST上昇、かつT波がcoved
またはsaddle back 型(注2)をとるもの。
(注1)先天性QT延長症候群の診断基準(1993)
| 心電図所見*1 |
点数 (QTc時間=QT/√RR) |
QTc >
|
480msec
460-470msec 2 450msec 1 |
3
2
1 |
torsades de pointes
T wave alternans
notched T waves(3誘導以上) 徐脈 |
2
1
1
0.5 |
臨床症状
| 失神発作 |
|
ストレスに伴う
ストレスに伴わない |
2
1
|
| 先天性聾 |
0.5 |
家族歴
*2
| 診断が確実な先天性QT延長症候群の家族暦あり |
1 |
| 30歳未満での原因不明の突然死の家族暦」あり |
0.5 |
*1 心電図所見に影響する薬物の服用や他の疾患がないこと
*2 同一家族はふくまないこと
※ 各点数の合計;4点以上=診断確実、2または3点=疑い、1点以下=可能性低い
(注2)
coved type ST上昇とsaddle back type のST上昇
