心臓検診

参考資料

表1)滋賀県学校心臓検診心電図判定基準-平成19年2月改訂版【PDF:約196KB】(高橋良明他:滋賀県学校心臓検診心電図判定基準改訂 平成19年2月. 滋賀県医師会報59(2)65-69,2006)

表2)学校心臓検診二次以降の進め方−二次検診対象者抽出ガイドラインの心電図所見から【画像:約300KB】(日本小児循環器学会学校心臓検診研究委員会:日児循誌16:965-966,2000)

表3)心臓病に対する「学校生活管理指導表」の活用、運動部(クラブ)活動可と禁の判定のめやす【画像:約330KB】(日本小児循環器学会学校心臓検診研究委員会:日児循誌18:610-611,2002)

表4)基礎心疾患を認めない不整脈の管理基準-2002年改訂【画像:約400KB】(日本小児循環器学会学校心臓検診研究委員会:日児循誌18:608-609,2002)

表5)川崎病管理基準-2002年改訂-【画像:約450KB】(日本川崎病研究会運営委員会:日児誌107:166-167,2003)

表6)学校心臓検診 二次検診対象者抽出のガイドライン【PDF:約210KB】(2006年改定)- 一次検診の心電図所見から - (日本小児循環器学術委員会 学校検診研究委員会:日児循誌22:503-513,2006)

表7)学校心臓検診アンケート【PDF:約19KB】(2007年)

表8)全国学校心臓検診アンケート結果(全国集計 各県および全国集計 市町村)【EXCELファイル:約668KB】(2007年)


心臓検診の説明と疾患の管理

A) 検診項目の特徴
  1. 心臓検診調査票
    心臓病の既往、心疾患を疑わせる症状の有無や家族の突然死歴などの注意が必要
  2. 学校医診察
    一般的には心音や心雑音の異常を見つける。脈の強弱、上肢下肢の脈の違いに注意する。
    その他妖精顔望(ヌーナン症候群)低身長(ターナー症候群)円錐動脈幹顔望(ファロー四徴症など)高身長(マルファン症候群)が心疾患の発見に有用である。



B) 検査
  1. 心電図検査
    滋賀県は全県において12誘導心電図で心電図を記録している。12誘導心電図は有用であり、(1)催不整脈右室異形成(ARVD)のV1-V3誘導のQRS終末の心室遅延電位を表すノッチの発見 (2)Brugada症候群のV1-V3のST上昇(coved type、 saddle back type)の発見 (3)QT延長症候群遺伝子別によるT波の形の判別、つまりLQT1では早期から生じる幅広い(broad-based)T波、LQT2では振幅が低く(low-amplitude)、時に2相性の(notched or biphasic)T波、LQT3では遅く立ち上がる(late onset)T波などの判別や心筋症などは省略4誘導では見逃される。
    心電図の見方は(1)規則正しいか否か (2)P波の大きさやP軸による心房位の確認(左下方にPベクトルがいけば心房位正位) (3)PQ時間CQRS時間及び波形(q波の有無、V5及びV6にq波が存在すると心室位は正位であり左室が左にあるということになる。) (4)QT時間 (5)T波の波形 (6)U波と見ていく。少し心電図を訓練し12誘導心電図からベクトル心電図を頭に再現できるようになればWPW症候群や心室性期外収縮の起源や心室位などが理解できてくる

  2. 胸部X線検査
    胸部X線の見方として(1)内臓位が正位か逆位かあいまい位かどうかを胃泡の位置、気管支の分岐、肺の葉間烈線、肝臓の正位かどうかで判断する。(2)心臓が回旋しているか位置の変異の有無を見る。(3)大動脈、肺動脈の位置と大きさをみる。食道造影をすればよくわかるが鎖骨下動脈起始異常や右大動脈や重複大動脈弓は大動脈弓に異常が現れる。(4)大静脈(5)肺野をみて肺血管陰影の増強、減少、うっ血をみる。胸水、過膨張、炎症、胸膜異常などを見る。
    心臓の見方は(1)上大静脈:拡張は右房圧の上昇する疾患(総肺静脈還流異常上心臓型など)、低形成は欠損や左上大静脈違残などがある。(2)右房:拡張は右縁の拡張で診断する。容量負荷の疾患(三尖弁閉鎖不全、Ebstein病、など)内圧上昇(三尖弁閉鎖、右室高血圧など)。まっすぐな右縁は心房間交通の大きな三尖弁閉鎖などである。(3)肺動脈主幹部:突出は圧上昇(肺高血圧)容量負荷(肺血流量増加疾患)(4)左房(5)左室(6)大動脈(7)肺血管陰影(8)胸郭骨系統の異常(9)石灰化の順で見ていく

  3. 運動負荷心電図
    (1) マスター2階段試験
    (2) トレッドミル運動負荷試験
    (3) エルゴメーター運動負荷試験
    (4) 跳躍法
    運動負荷心電図は不整脈の危険度、心筋虚血の程度、運動耐用能の評価に必須の検査項目である。跳躍法やマスター2階段試験は簡単にでき不整脈や心筋虚血のスクリーニングや経過観察に適しているが負荷中の心電図の記録はできない。自転車エルゴメーターは自転車に乗りなれていないと負荷が十分にかからない場合が多い筆者はトレッドミルが1番有用であると考えている。

  4. 心エコー検査
    Mモード法は心臓の計測に有用である。Bモード法は解剖、弁の動き心臓の壁の厚さ心房心室の大きさ、心室と血管の位置関係を見ることができる。ドップラー法は血液の流れ、速度、方向まで知ることができる。速度から半月弁、房室弁の前後の圧較差が知ることができる

  5. ホルター心電図
    24時間心電図の記録が可能であるため、標準12誘導では検出が困難な一過性に出現する不整脈や心筋虚血の判定に有用である。

  6. リアルタイム解析型心電図
    毎日は発作が起きないが1週間に2-3回発作がおきる人に有用である。朝起きて生徒にリアルタイム心電図を胸に装着してもらい、寝る前にはずす。発作時にボタンをおして心電図を記録する。5−7日連続で装着してもらう。電話伝送も可能。
    参考リンク:カード・ガード・ジャパン(株)

  7. 携帯心電図
    1週間に1回くらいの発作があるときに生徒に持って帰ってもらう。発作時に胸に当て心電図を30秒間記録して電話で心電図を診療所に伝送してもらう。
    参考リンク:カード・ガード・ジャパン(株)

  8. 心臓カテーテル検査
    入院し心臓や大血管の形態や圧、心機能を詳しく調べる。血液酸素飽和度、酸素消費量、心拍出量と短絡量の計算、心臓大血管内の圧、体血管抵抗と肺血管抵抗などを測定し、心臓血管を造影する。

  9. その他の検査
    CT,MRI.核医学検査、電気生理学検査、加算平均心電図、呼吸機能検査などがあるが、疾患にあわせて選択しおこなわれる。



C) 児童生徒の心臓病
  1. 先天性心疾患
    1. 心房中隔欠損症(ASD)
      心房中隔に穴があいている。XPは肺血流増大と心拡大。聴診は固定性U音分裂と収縮期駆出性雑音であり左右短絡が50%以上で拡張期にランブルが聞こえる。心電図は右軸、不完全右脚ブロック。肺高血圧がなく肺対血流量比が2.0以上で手術適応
    2. 心内膜床欠損症(ECD)
      すべてに手術適応である。二つの心房心室を分離している心内膜床の欠損であり、XPは肺血流増加で心拡大がある。心電図は左軸である。完全型と不完全型がある。
    3. 心室中隔欠損症(VSD)
      左右の心室中隔の間に穴があいている。自然に閉鎖することもあるが、穴が小さくても大動脈弁が穴にひっかかり大動脈弁閉鎖不全がおこると手術適応である。穴の大きさ、肺高血圧の程度、合併症により手術時期がことなる。
    4. 肺動脈狭窄症(PS)
      肺動脈弁や弁上や弁下(漏斗部)の狭窄がある。心エコーにより圧較差が測定されそれにより手術適応が決まる。肺動脈弁狭窄ではカテーテルにより経皮的バルーン肺動脈弁形成がおこなわれる。
    5. 動脈管開存症(PDA)
      大動脈と肺動脈の間に動脈管が存在する病気である。カテーテルでコイルを詰めて閉鎖する場合と外科手術による場合がある。軽いものは運動制限不要であるが中等度以上は制限が必要である。
    6. ファロー四徴症(TF)
      チアノーゼ心疾患では1番多い。心室中隔欠損に肺動脈狭窄と大動脈の心室中隔への騎乗及び右室肥大を伴う。姑息手術と根治手術があり肺動脈が細ければ姑息手術となる。無酸素発作がある。あれば至急手術である。いろいろな合併症により手術適応は異なる。
    7. 両大血管右室起始症(DORV)
      大動脈及び肺動脈が右室から起こるもので肺動脈狭窄がある場合と肺高血圧がある場合がある。手術もファロー四徴症のように直す場合と大血管転換症のようにJatene手術をする場合がある。
    8. 完全大血管転換症
      出生時よりチアノーゼがありBAS手術をおこなう。解剖学的右室から大動脈が起こり解剖学的左室から肺動脈が起こる疾患で3型に分類される。1型と2型はJatene手術3型はラステリ手術となる。
    9. 修正大血管転換症
      右房から解剖学的左室に繋がりそこから肺動脈が起こる。肺からは左房につながり解剖学的右室から大動脈が起こる。一般的にはチアノーゼはないが心室中隔欠損に肺動脈狭窄を合併するとチアノーゼがおこる。合併症がない場合は無症状で経過する。
    10. 大動脈狭窄症
      程度により新生児より症状が出現する。手術はカテーテルによるバルーン拡大術や切開手術や弁置換があるが近年肺動脈弁を活用したROSS手術がおこなわれている。重症度により管理はさまざまである。
    11. 大動脈縮窄症
      大動脈に限局的に狭窄を生じる。ゆえに上肢と下肢で血圧差を生じる。上肢高血圧の原因となることもある。合併症により症状はさまざまである。

  2. 心筋疾患
    1. 心筋症
      拡張型心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症、不整脈源性右室心筋症、特定心筋症に分類される。いずれも突然死が多いので専門医による管理が必要である。遺伝子が多く発見されている。
    2. 心筋炎
      ウイルス、細菌、リューマチ熱、膠原病などで起こり、突然死も起こりうる。急性期を乗り切ってもその後心筋炎後心筋症となることもあり重大な管理が必要である。

  3. 川崎病( 表5:川崎病管理基準参照)

  4. 不整脈心電図異常の管理のしかた
    (文中のA判定B判定は表1:滋賀県学校心臓検診心電図判定基準にそって書いている)

    1. 心拍数
      頻脈は甲状腺機能亢進症や褐色細胞腫などのホルモン異常による頻脈や心不全の頻脈に注意する。徐脈は要注意である。運動負荷試験を行い心拍数が容易に150以上になるかを調べる。洞不全症候群に注意する。安静時に容易に正常心拍数になる洞性頻脈や運動負荷で容易に心拍数150以上になる洞性徐脈は心エコーで異常なければ管理不要でよい。

    2. QRS電気軸
      電気軸は解剖学的な心室の大きさ、肥大心筋の重量、右脚、左脚前肢、後枝の長さ及びそれらのブロック、異常伝導路の有無で左右される。基礎心疾患のない右軸偏位も左軸偏位も同様である。心表面に興奮が到達する順序は@右室乳頭筋付着部、A左室前乳頭筋付着部、B左室後乳頭筋付着部の順である。こどもの心臓の右脚、左脚前枝、後枝の長さは心臓が小さいので各枝の差があまりなく、心表面の興奮到達時間が容易に変化し簡単に右軸をむいたり、左軸を向いたりする。左軸偏位の場合、左脚前枝ブロックと左脚後枝の短縮のための相対的左脚前枝ブロックの場合がある。この鑑別は胸部誘導心電図で伝導遅延(QRSのノッチのあるなし)を確認しQRS時間の延長がないかを確認する。左脚前枝ブロックであれば必ず伝導遅延が存在する。左脚後枝の短縮のための相対的左脚前枝ブロックは管理不要である。軸偏位の異常は一度心エコーをとり心筋肥大や心筋症がないかを見ておくと良い。異常なければ管理不要にする。

    3. 心室内伝導
      心室内伝道障害の分類は
      1. 脚ブロック
        完全右脚ブロックCRBBB
        完全左脚ブロックCLBBB
        不完全右脚ブロックIRBBB
        不完全左脚ブロックILBBB
      2. 分枝ブロック
        左脚前枝ブロック
        左脚後枝ブロック
      3. 2枝、3枝ブロック
      4. 非特異的心室内伝導障害
      である。

      非特異的心室内伝導障害はi.脚ブロック.ii.分枝ブロックiii.2枝、3枝ブロックの診断基準をみたさないもので、de Luna らは心室内伝導障害を中枢性と末梢性に分類したが、この非特異的心室内伝導障害は末梢ブロックの範疇にはいると考えられ心筋の瀰漫性伝導障害のために生じ、特発性拡張型心筋症や心筋炎などの心筋を障害する疾患にみられ予後不良としている。検査としては一度心エコーなど精密検査され異常があるかないかを調べる必要がある。脚ブロックの障害部位(中枢ブロックと末梢ブロック)としては、右脚ブロックはヒスが右脚にわかれてから右室乳頭筋までを中枢(本幹)といい、ここまでの障害を中枢(本幹)ブロック、それ以降のプルキンエの障害を末梢ブロックという。左脚ブロックもヒスが左脚に別れてから左室乳頭筋までを中枢(本幹)といい、ここまでの障害は中枢(本幹)ブロック、それ以降の障害を末梢ブロックという。右脚ブロックは中枢(本幹)と末梢ブロックはどちらの予後が悪いかは報告者により異なるがde Luna のように末梢が(心筋症などで)広く傷害されると予後が悪いという報告者が多い。左脚ブロックは中枢も末梢も予後が悪い。完全左脚ブロック(完全左脚本幹ブロック)はヒスから左脚にきた刺激が心室中隔の心筋細胞に電位がこぼれおちる前(中枢側)にブロックされているので心室中隔に電位はおちず、中隔ベクトルがないので、右脚からの電位が右室乳頭筋に電位を生じさせ、ここから初めて心室起電力が始まる。ゆえにV1,V2は電位を見送る方向になりQSになる。その後心室中隔を右室から左室に筋伝導で興奮するので幅広いqのないV6の波形となる。完全左脚ブロックは必ず精査及び管理が必要である。心筋症を始めとする心筋障害を必ず疑わねばならない。不完全右脚ブロックは心雑音がなければ管理不要であるがBrugada様心電図に注意する。完全右脚ブロックは一度心エコーしエブスタインや心筋症の合併がないか見ておくと良い。右脚ブロック+左脚前枝ブロックは、基礎疾患がなければ1年毎の追跡のみであるが、術後心は完全房室ブロックへの移行があり注意を要する。左脚末梢ブロックは、ブロック部位は心室中隔の心筋細胞に電位がこぼれおちる部位より末梢(左室乳頭筋付着部位よりも末梢)なので中隔ベクトルは存在し、V5,6にqは存在する。この診断基準に左脚後枝ブロックはない。ここで左脚後枝ブロックの誤った概念を訂正する。まだ一部教科書には左脚後枝ブロックは右軸偏位するとかかれているが、オリジナル論文では、右脚ブロックを伴う場合左脚後枝ブロックは右軸偏位すると書かれている。右軸偏位はあくまでも左脚後枝ブロックに右脚ブロックを伴った場合にかぎる。河村らは実験的左脚後枝ブロックでは右軸偏位はおこさず、左脚後枝ブロック作成後右脚本幹ブロックを作成して初めて右軸偏位を伴ったことを報告した。左脚後枝ブロックは支配領域も狭く特異な心電図変化は示さない。ベクトルがやや後方に偏位するだけである。

    4. 房室伝導
      1. 高度房室ブロック、完全房室ブロック及びU度房室ブロック
        A判定で精密検査の必要がある。T度房室ブロックでも小学生0.24秒中学生0.28秒以上はA判定で精密検査を勧める。注意点はAH(房室結節とヒス束の間),BH(ヒス束内),HV(ヒス束と心室の間)のどこにブロック部位があるかを12誘導心電図で見分けることである。BHやHVブロックは予後が悪いので管理が必要である。T度やU度のウエンケバッハ型房室ブロックでもBHやHVブロックはありうる。鑑別の方法としては
        (1)12誘導心電図:補充調律のQRS幅はAHまたはBHブロックでは正常で、HVブロックでは幅が広いことが多い。しかし、発症前から脚ブロックがあるとこの限りではない。
        (2)薬剤反応:高度房室ブロックでAHブロックではアトロピンでP波が増加するがBHやHVブロックではアトロピンでP波は増加するが伝導比は不変かあるいは低下する。
        (3)運動負荷:AHブロックでは運動負荷で伝導が改善することが多い。BHあるいはHVブロックでは伝導比は不変あるいは低下する。
        (4)ホルター心電図:AHブロックではBHあるいはHVブロックに比し総心拍数は有意に多い。BHやHVブロックでは徐脈傾向にあり、日内変動に乏しく、労作時にも心拍数の増加は少ない。鑑別診断として典型的でない房室ブロックは2重房室伝導も考えておくのが良い。運動負荷で正常化するU度房室ブロックは管理不要でも良いがBHやHVブロックが疑われる場合は管理しても良い。
      2. WPW症候群
        心電図でデルタ波とPR短縮をともなう。房室副伝導路が古典的WPW症候群である。0.12秒以内のPR時間短縮、明らかなデルタ波が認められる場合は房室副伝導路と考えて間違いはない。房室結節からヒス及びプルキンエを通る正常伝導路以外に別に副伝導路(房室副伝導路)が存在し発作性上室頻拍症の原因となる。房室副伝導路は頻脈発作の頻度も高く、心房細動時の心室高頻度興奮の危険性もあり、注意すべきである。発作が頻発すれば薬物治療かカテーテルアブレーションの治療となる。心電図上WPW症候群らしい小さなデルタ波を伴うものは脚からのリーク(束枝―心室副伝導路)であり、これはリエントリー回路を形成しないので管理不要でよい。束枝―心室副伝導路かどうかの鑑別はまず運動負荷を行ない正常心電図がでれば房室副伝導路である。また、ATP静注により房室ブロックを生じ静注前と同じ心電図であれば束枝―心室副伝導路である。房室副伝導路ではATP静注によりデルタ波が拡大する。デルタ波が小さい場合は、a)束枝―心室副伝導路以外には、b)心房から房室副伝導路までの伝導時間が長い(左側壁など)場合と、c)正常房室結節伝導が亢進している場合もあるので注意を要する。房室結節を通る副伝導路は伝導時間が長いので安全である。精密検査ではまず心エコーで心筋症、エブスタイン、修正大血管転換症などの合併疾患を除外する。運動負荷で頻拍の誘発あるいはデルタ波の消失を確認する。デルタ波の消失を認めれば間欠性WPW症候群と診断される。これらは発作性上室頻拍症を起こす可能性はあるが、副伝導路の不応期が長く心房細動の高頻度頻拍発作を起こさないのでハイリスクではない。20歳以下のデルタ波のある心電図の30-40%は間欠性WPW症候群である。もし経過観察中にデルタ波が消失した場合、副伝導路の順行性伝導の消失を意味するが逆伝導が残存しているので頻拍発作の原因にはなりうるがその場合数年フォローし頻拍の自覚症状がない場合はフォローを打ち切っても良い。学童期では10%がデルタ波は消失する。WPW症候群でも一見、PQ時間が正常に見える症例がよくある。12誘導をよくみて、短いPQ時間の誘導をさがすことと、デルタ波らしいところを探すことがWPW診断につながる。頻拍発作のないWPW症候群はE(運動制限なし)でフオローする。
      3. 変行伝導
        B判定である。WPW症候群や心室期外収縮との鑑別が必要である。
      4. 人工ペースメーカー
        A判定である。
      5. PR短縮
        PR短縮にはa)房室接合部調律b)デルタ波を伴わないPR短縮c)デルタ波を伴うPR短縮の3種類ある。a)とb)は心電図判定基準ではB判定である。PR短縮の原因で一般的には多いのが房室接合部調律でありUVaVFで陰性P波をみとめる。b)は以前James束という副伝導路が考えられていたが、現在、電気生理学的にはJames束は証明されていない。今は小さい房室結節のため、あるいは房室結節の伝導の亢進のためにPRが短縮していると考えられている。PR短縮のみではa)b) とも管理不要である。James束のあるLGL症候群という診断は今はもうないというのが現在の考え方の主流である。
      6. 心電図で房室接合部調律は、心電図中に少しでも正常洞調律があれば、精密検査不要にしてよいが、全くなければ洞不全症候群や稀ではあるがWPW症候群も否定は出来ないので管理しても良い。PR短縮が認められる心電図では、P波が洞性P波であるかどうかを確認することが重要である。

    5. 調律
      1. 上室期外収縮
        洞結節以外の心房から異所性に興奮が起こる。
        滋賀県心電図判定基準では単形性のものはB判定であり、多形性あるいは多発連発があればA判定である。管理は多形性上室期外収縮や連発するものは運動負荷で消失するものはE、単形性の上室期外収縮は管理不要である。
      2. 心室期外収縮、2連発の心室期外収縮(Couplet)及び心室頻拍
        心室から異所性に興奮が起こる。A判定である。運動負荷を行う。心室期外収縮において運動負荷で消失するものはEで管理する。ただし問診で失神の既往があるかないかを必ず確認する。運動誘発性心室頻拍および特発性心室細動は、安静時心電図で発見されることは少なく、失神などの症状が重要である。失神があれば心拍数を極限にあげる激しい運動負荷試験が必要である。心室期外収縮の症例で運動負荷試験を行い、心拍数120でいったん心室期外収縮が消失したものが心拍数をもっと上げると多形性の連発の心室期外収縮や心室頻拍が出現することがある。このような症例は突然死の恐れがある。また運動亜最大負荷時に出現する心室期外収縮も要注意であり、このような生徒は自覚症状がないのでどんどん運動し突然死に至る可能性がある。失神発作が運動に関連したもので、運動負荷中に心室期外収縮の頻発や連発が生じる症例は運動制限が必要である。運動中の心室期外収縮の増加は、運動負荷後の心室期外収縮の頻発や連発の症例よりも再現性があり危険性は高い。心室期外収縮の連発はどのように管理するかは問題となっているが、先行QRSとの連結時間をみてRRが400msec以上であれば運動はさせてよいと著者は考えている(但し連発心室期外収縮で多形性があれば運動制限が必要である)。心室頻拍が連続するものはカテーテルアブレーションを勧める。心室期外収縮でも多発し自覚症状がひどい症例や非連続の心室頻拍であっても心室頻拍の頻度が多いときや自覚症状があればアブレーションを勧める。
      3. 心室固有調律
        心拍数が120以下を心室固有調律として、それ以上を心室頻拍としている。運動負荷で正常洞調律になればE管理である。ならない場合は心室頻拍の管理に準ずる。
      4. 心房細動、心房粗動
        心房細動は小児ではまれ、手術後に多い。薬物で除細動するかレートコントロールを行う。最近カテーテルアブレーションが行われるようになった。WPWの合併に注意する。心房粗動は突然死を起こすこともある。手術後や基礎心疾患があるものが多い。薬物治療も行われるがカテーテルアブレーションの適応である。
      5. 上室性頻拍
        a)房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT):房室結節内を2重に伝導路を旋回する。
        b)房室リエントリー性頻拍(AVRT):副伝導路を介する頻拍である。
        c)心房頻拍:異所性心房頻拍と心房内リエントリー性頻拍に分類される。
        すべてアブレーションの適応である。薬剤で管理することもある。
      6. 洞停止または洞房ブロック
        洞不全症候群に注意する。洞不全症候群の分類はT型:洞性徐脈、U型:洞房ブロック、洞停止、V型:徐脈頻脈症候群に分類される。失神などの症状があればペースメーカーの適応(日本心臓ペーシング学会のガイドラインがある)である。洞不全症候群の管理として著者はトレッドミルでa)心拍数が洞性頻脈で150以上なるか、b)亜最大負荷の直後に運動負荷を停止したときに迷走神経刺激が強く出る場合があり、洞停止がのびないかの2点に注目している。洞不全症候群で心拍数が運動負荷で150以上になり運動負荷直後に洞停止の延長がなければ、Eで運動クラブ可能で3−6ヶ月に1回の検査で管理する。心拍数が亜最大負荷で100−150くらいしかならないときはE禁、運動負荷直後5秒以上の洞停止があればE禁かD。ホルターして5秒以上の洞停止があればE禁かD。失神や立ちくらみがでればペースメーカーの適応を指導する。また、新垣は運動をどうするかに関しては運動により症状がでなければ可とする。完全房室ブロックの子では運動負荷で心拍数が110以上となる子はほとんど普通に運動をしていることが多い。運動に応じた心拍応答があること、運動後のlong pauseがないこと、症状のない洞機能不全は運動制限の必要はないと述べている。ただし、運動による刺激伝導系の肥大と伝導障害の可能性も考えられるため、専門医の監視下で行なうことが望ましい。
      7. 接合部調律
        PR短縮の項参照。精密検査にこられたら運動負荷で洞性頻脈になるかを確認するのも良い。洞性頻脈になれば管理不要である。
      8. 房室解離
        多くは洞徐脈を伴っているのでA判定とした。
        運動負荷で洞性頻脈になるのを確認する。なればE可で管理する。
      9. 補充収縮または補充調律
        これのみでは、B判定である。もし精密検査にこられたら運動負荷で洞頻脈になるかを確認するのも良い。洞頻脈になれば管理不要である。

    6. Q波
      1. 右側胸部誘導に異常Q波を見た場合
        1. 修正大血管転換症(右側に解剖学的左室があり中隔ベクトルが左をむく)
        2. B型WPW症候群(房室副伝導路が右室にあり心室興奮が左方にむかうため)
        3. 強度の右室肥大(右室肥大が強すぎて時計軸回転がおこり中隔ベクトルが左をむく)
        4. 強度の左室肥大(左室肥大が強すぎて反時計軸回転がおこり中隔ベクトルが左をむく)
        5. 心臓の位置異常(時計軸回転及び反時計軸回転のつよいものあるいは胸郭の変形や肺の異常による心臓の位置異常)
        6. 左脚本幹ブロック(心室中隔に電位を落とす前にブロックされているので中隔ベクトルがなく右室乳頭筋付着部より興奮が始まるので初期ベクトルは左方を向く)
        7. 右室前壁の虚血(心筋梗塞などにより右室前壁が陰性に荷電した場合初期ベクトルは左方を向く)
        以上を鑑別する。
      2. 左側胸部誘導にqがない場合は初期ベクトルが左方を向いているので上記i.〜vii.を考える。
      3. 左側胸部誘導で幅広いq波を認めた場合は中隔の肥厚を考えて肥大型心筋症を鑑別に入れる。
      4. 左側胸部誘導で深いq波を認めた場合は僧房弁逆流などの左室の容量負荷を考える。

    7. RS波
      右室肥大は右側胸部誘導でV1でqRS,qR,またはR型でA判定あるいは点数性合計5点でA判定である。左室肥大では左側胸部誘導のST-Tの肥大性変化か点数性合計5点でA判定である。左室肥大の場合は必ず血圧を測定する。腎動脈血管性高血圧や大動脈縮窄症を鑑別する。一般的に右室肥大のうち容量負荷は不完全右脚ブロックを呈する。圧負荷はV1のRが高くT波は陰転する。左室肥大の容量負荷はV5,V6で深いQ波を呈する。圧負荷ではV5、V6での高いR波とT波の陰転及びV1の深いS波を呈する。

    8. ST接合部及びST区間
      V1からV3のST上昇はBrugadaと早期再分極症候群を鑑別する。ST低下は虚血や心筋症を考える。必ず運動負荷を行い虚血や心筋障害の有無を確認する。

    9. T波
      T波異常は心筋虚血を表す所見で冠動脈疾患や心筋疾患でみられる。中枢疾患、甲状腺疾患でもみられるが低カリウム血症でもしばしば見られる。血清カリウムの低下は心筋細胞内外のイオン勾配が増大し静止電位は深くなり、活動電位の第3相の延長をきたす、この結果STの低下、T波の平低あるいは陰性化をきたしU波は増高する。V4誘導付近のみT波が陰性化するものを孤立性陰性T症候群といい心房中隔欠損症の特異的所見とされている。T波異常も運動負荷は必ず行う。

    10. その他
      1. 低電位差
        B判定である。甲状腺機能低下症、心膜液貯留、心筋障害に注意する。
      2. 心房負荷
        B判定である。これ単独では精密検査の必要はない。多くは胸郭の変形によるものである。但し右室肥大や左室肥大パターンを合併した場合は弁膜症などの合併のための心房負荷が考えられA判定に変更する。心エコーで異常なければ管理不要である。
      3. 右胸心
        心房位や心室位に注意する。修正大血管転換症やシミター症候群などの位置異常にも注意が必要である。心房位が逆位の正常心は管理不要である。
      4. QT延長
        QT延長症候群に注意する。診断はSchwartzの判定基準(表1)を用いる。家族歴が最も重要である。QT延長症候群と診断されれば本人の遺伝子検索を行う。また、家族親戚の心電図検査及び遺伝子検索を行う。遺伝子でRomano-Ward症候群はLQT1-LQT8に分類されJervell & Lange-Nielsen症候群はJLN1とJLN 2に分類される。学校検診では一般的にQTcが0.45以上で精密検査を勧める。QTc時間は12誘導すべて異なり、そのうち最長のQTcと最短のQTcの時間差をQT dispersionといい100msec以上QT dispersionがあれば要注意といわれている。またQTc時間は日内変動があり、やはりホルター心電図上最長のQTcと最短のQTcの差(QTc dynamics)が長いと要注意である。またホルター心電図上LQT2やLQT3では徐脈時にQT間隔の延長とともに交代性T波などのT波の変化を見ることがある。運動負荷でLQT1はQTc時間が延長するがLQT2とLQT3は短縮するので運動負荷でQTc時間が短縮し正常化する症例を管理不要とするとLQT2やLQT3を見落とす恐れがある。また過去の突然死の症例で小学校1年生でQTcが0.47で精密検査を必要とされ、精密検査医療機関の安静時心電図で0.43と正常となり管理不要とされた症例が小学校4年生で0.51となり突然死した例があり、現在管理の方法としては一度でもQTc時間が0.45以上こえた症例はすべて管理が必要であると考えられている。従来QTc時間が0.6以上で投薬といわれていたが最近Prioriらは0.5以上で投薬が必要ではないかといっている。QT延長とTdpを誘発する薬剤のリストがwww.Torsades.orgにある。QT延長の患者にはエリスロシン、クラリシッドなどは服用しないように指導する。検査として顔面浸水負荷試験は重要でQT間隔が延長する場合、水泳中の注意(潜水しない、高いところから飛び込まない、冷水で泳がない)を指導する。High riskのQT延長症候群の患者さんに関してはICDを植え込むべきだというのがAHA(全米心臓学会)でも出ている。症状がなければ、1年に1回、運動負荷、顔面冷水浸水負荷、ホルター心電図を行う。家族歴があり、心電図がボーダーラインの場合、遺伝子異常が証明できていなければやはり1年に1回の管理が必要である。家族歴があれば全員遺伝子検査をおこなう。
      5. 陰性U波
        B判定である。通常のU波の電位はプルキンエ線維の電位と考えられている。プルキンエ細胞の再分極は常にT波の終末点よりも長く、少なくとも正常T波の形成には関与していない。ただし、巨大なU波がある場合TU複合として、後のU波を含めてQT時間をとったほうがいい場合がある。巨大なU波を見た場合低カリウム血症を疑う。また周期性四肢マヒやAndersen症候群を必ず鑑別に考える必要がある。陽性U波0.2mV以上あればA判定にしてもよい。
      6. Brugada型心電図
        診断基準はV1-V3でJ点から40msecの時点でSTが0.2mV以上の上昇がありcoved あるいはsaddle back型をみとめるもので右脚ブロックはあってもなくても良い。診断はGussakiらのJ点をはっきり見極めた診断が重要である。家族歴も重要であり家族や近い親戚で失神がないかを必ず問診で聞く必要がある。失神などの症状があり、心電図がBrugadaかどうかはっきりしないときのみ、薬物負荷を考える。薬物負荷はピルジカイナイド負荷をおこなうが必ず点滴して行う。心電図をとるごとにSTが変動し上昇したり正常化したりする症例は薬物負荷は行わず、すぐ電気生理学検査を勧める。このST上昇は日によって変動し特に発作の直前に増強することで知られている。ST上昇が通常の誘導部位でははっきりしない場合1肋間上の心電図で有意なST上昇が認められることが多い。遺伝子検査も診断の根拠にはなるが時間がかかる。電気生理学検査でVTやVfが誘発されればICD(植え込み型除細動器)の植え込みを勧める。頻度は成人では1人/2000人であるが滋賀県の学校検診の調査では、小学校0、中学校、高校は約1人/1万人である。症状のない例をBrugada様心電図といい、失神などの症状があるものをBrugada症候群という。Brugada症候群は厳密な管理を必要としICD(植え込み型除細動器植え込み)の適応である(日本循環器学会のガイドラインがある)。